2025年2月度 「時給1,500円」に近づく自治体ランキング(九州・沖縄)を発表しました

分析用求人ビッグデータを提供する、株式会社フロッグ(所在地:東京都千代田区、代表取締役:阪野 香子、以下「当社」)は、「2025年2月度 『時給1,500円』に近づく自治体ランキング(九州・沖縄)」を発表しました。
※本調査は、『タウンワーク』『マイナビバイト』『バイトル』『フロムエー』『イーアイデム』に掲載された求人情報を収集・集計しました。
概要
政府は、2020年代中に最低賃金の全国平均を「1,500円」まで引き上げる目標を発表しました。また、最低賃金の引き上げに伴い、募集時給も年々上昇しています。では、「募集時給」が1,500円に到達する勢いのある都道府県はどこなのでしょうか。
「2025年1月度 『時給1,500円』に近づく都道府県ランキング」に続き、今回は九州・沖縄エリアの自治体に焦点を当て、募集賃金の動向をチェックしていきます。最新の傾向を示す参考資料として、ぜひご活用ください!
最低賃金改定状況

まずは最低賃金の全国加重平均額が、過去どのくらい上昇してきたのかを見てみます。年々引き上げ率は高まっており、2024年は前年と比較して+5.08%(+51円)の上昇で、全国加重平均額は1,055円となりました。1,500円まではあと445円の引き上げが必要となり、2029年までに達成するためには毎年+8%以上の引き上げが求められます。
※最低賃金の改定については厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」を参照

続いて、最低賃金改定額を都道府県別に見てみると、2024年度の改定により全ての都道府県で最低賃金が900円以上となりました。
最低賃金が最も高い東京都は1,163円となっており、1,500円まであと337円の引き上げが必要です。最も低い秋田県では、現在の951円から1,500円まではあと549円引き上げる必要があります。
九州・沖縄エリアに目を向けると、最低賃金が最も高いのは福岡県の992円、最も低いのは熊本県、宮崎県、沖縄県の952円となっており、東京都との差は依然として200円以上あります。沖縄県を含む九州地方の大半の県では、1,500円までに500円以上の引き上げが必要であり、現状のペースでは到達までに相当な時間を要する見込みです。
※最低賃金の改定については厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」を参照
募集時給動向

九州・沖縄エリアにおける2022年2月から2025年2月まで3年間の募集時給を、推移で分析します。950円台だった募集賃金は、最低賃金改定の2022年10月に1,000円へと到達。2023年の中頃には1,050円へと迫り、最低賃金改定後の同年11月以降は1,050円を越えて推移しています。
2025年2月までの3年間で、募集時給は965円から+148円(+15.34%)上昇し、1,113円となっています。
「時給1,500円」に近づく九州・沖縄エリアの自治体は?
ここでは、募集時給が1,500円に近づく勢いのある九州・沖縄エリアの自治体を調査します。前年比を見る際は、外れ値調整のため、2024年2月と2025年2月時点で求人が500件以上ある自治体を対象としています。

まずは、2025年2月の募集時給額をランキングで見てみると、福岡県北九州市が1,204円で1位となりました。次いで福岡県福岡市が1,199円、熊本県熊本市が1,176円、福岡県福岡市中央区が1,163円、福岡県筑紫野市が1,155円と続いています。3位の熊本県を除いて福岡県の自治体がランクインしており、同エリアの募集賃金が九州・沖縄エリアの自治体において高い水準をキープしていることがわかります。一方で上位5位にランクインした福岡県の前年比の伸び率は-0.58%~+3.84%であり、熊本県熊本市の+8.59%と比べて大きな上昇は見られませんでした。
熊本県熊本市では2025年2月時点で1,500円まで残り324円(+27.55%)となっており、前年比+8.59%の勢いが続くと2028年には1,500円に到達する見込みです。
熊本銀行が発表した「TSMC進出に伴う熊本【九州】への波及効果について」によれば、台湾の半導体企業であるTSMCが2021年10月に熊本県菊陽町への進出を発表してから、近隣エリアへの半導体と関連性の高い企業の進出が増加傾向にあるといいます。

では、2021年10月から熊本県熊本市の募集賃金はどのように推移しているのでしょうか。東京および全国平均の募集賃金推移と比較するため、2021年10月を100とした指数で見てみます。
熊本市の募集賃金は2022年10月以降、東京都の伸び率を超え、さらに2022年12月以降は全国平均の伸び率を上回る水準で推移しています。熊本市はTSMCが進出した菊陽町に隣接する都市であるため、求人需要の増加が募集賃金の上昇につながっている可能性が高いと考えられます。

続いて、2025年2月時点の募集時給を前年比のランキングで分析し、時給上昇率に勢いのある九州・沖縄エリアの自治体を調査します。1位には、熊本県熊本市が+8.59%でランクインしています。次に大分県別府市が+7.42%、大分県大分市が+5.44%、宮崎県宮崎市が+4.31%、福岡県福岡市中央区が+3.84%となりました。
募集時給ランキングでは福岡県の自治体が上位を占める一方、前年比の伸び率では熊本県、大分県、宮崎県、沖縄県、佐賀県、鹿児島県の主要都市がTOP10にランクインしました。最低賃金の改定に加え、インバウンド需要の回復や人材獲得競争の激化が影響していると考えられます。特に、福岡市のような大都市圏だけでなく、大分市や宮崎市といった地方中核都市でも、競争力を高めるために賃金水準の引き上げが進んでいる点が注目されます。
全国の平均募集時給は2025年2月時点で1,261円となっており、1,500円までは残り239円(+18.95%)となりました。年+5%程度の上昇で2029年には到達するペースであり、募集時給ベースでは政府目標を達成できる勢いと言えます。

最後に、募集時給の前年比ランキングで1位だった熊本県熊本市と東京都、そして全国の平均募集時給をそれぞれ前月比の推移で比較します。
2024年10月の最低賃金改定直後、同月の全国の募集時給は+1.99%、東京都では+1.72%と上昇しました。一方、熊本市では+1.85%と増加したものの、11月には-0.72%まで減少しています。
この変動は、熊本市の企業の採用戦略による影響が大きい可能性があります。地方都市では求人市場が大都市圏と比べて小さい為、企業ごとの採用計画が市場全体の賃金に与える影響が大きい傾向にあります。特に中小企業が多い地域では、一時的な採用強化やコスト調整の影響が表れやすいと考えられます。
本件の詳細はこちらのPDFよりご覧ください。
【2025年2月度】「時給1,500円」に近づく自治体ランキング(九州・沖縄)