2025年10月度 都道府県別 最低賃金改定後レポートを発表しました

分析用求人ビッグデータを提供する、株式会社フロッグ(所在地:東京都千代田区、代表取締役:阪野 香子、以下「当社」)は、「2025年10月度 都道府県別 最低賃金改定後レポート」を発表しました。

概要

厚生労働省が発表した「地域別最低賃金の全国一覧」によると、2025年度の最低賃金引き上げ額の幅は63円~82円となりました。最低賃金の全国加重平均額は1,121円で、2024年度の1,055円から66円増加。昨今の物価高などが反映され、賃上げの勢いが強まっている様子がうかがえます。

過去最大となる最低賃金の引き上げが10月以降行われていますが、求人サイトでの募集時給にはどのような影響を与えているのでしょうか。今回は当社が収集している求人媒体の掲載情報を活用し、最低賃金の改定が実施された自治体について分析しました。最新の傾向を示す参考資料として、ぜひご活用ください!

トピック

・最低賃金の改定後も、最低賃金未満の求人が各自治体で1~2%程度存在し、特に千葉県・神奈川県・滋賀県では2%を超える状況
・募集時給の全国平均は1,194円から1,217円へ上昇し、過去3年半で最大の伸び率(前月比+1.93%)を記録
・最低賃金改定を行った自治体のうち、特に鳥取県(前月比+3.83%)、兵庫県(同+3.79%)、宮城県(同+3.57%)で募集時給の上昇が顕著
・宮城県では求人数が前月比で6%減少するなど、賃上げ負担を背景に、求人掲載を控える動きも一部で見られた

最低賃金の改定状況

最低賃金の引き上げ率は年々高まっており、2025年度の全国加重平均額は前年度と比較して+66円の上昇となりました。都道府県別に見てみると、引き上げ額の幅は63円~82円で、今回の改定により全ての都道府県で最低賃金が1,000円を上回りました。

また、中小企業などが賃上げに向けた準備期間を確保できるよう、各自治体で施行時期の調整を行っています。今回の調査時点では、北海道、宮城県、栃木県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県、滋賀県、兵庫県、鳥取県の11都道県で最低賃金の引き上げが行われました。

※最低賃金の改定については厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」を参照

新最低賃金未満の求人割合

ここでは、調査時点で最低賃金の改定を行った自治体について、改定後の最低賃金に満たない求人の割合を調査します。これにより、改定に間に合っていない求人がどれだけあるかを分析しました。

今回の調査では、対象となる全ての自治体において最低賃金以下の求人が1〜2%程度存在していることが分かりました。特に、千葉県や神奈川県、滋賀県では2%を超える求人が最低賃金の改定に追いついていない状況です。一部の求人では、注釈として「10月以降は最低賃金以上に引き上げ予定」といった記載もありましたが、その他の求人では今後の内容の見直しが求められます。

募集時給の動向

全国平均の推移

アルバイト系求人サイトにおける募集時給の全国平均を見てみると、2025年9月から2025年10月までの1ヶ月で1,194円から1,217円へと+1.93%(23円)上昇しました。

2022年度と2023年度については、最低賃金の改定が行われた10月にそれぞれ前月から+0.50%前後時給が上昇しています。2024年度を見てみると、改定前の9月に前月比+0.42%上昇しました。これまでの改定では+1%以下の上昇率にとどまっていましたが、過去最大となる引き上げを行った2025年度では+2%近い伸びを見せました。

最低賃金の引き上げをこれから行う自治体も残っているため、今後の動向にも注目です。

続いて、募集時給の価格帯ごとの求人数を割合で見てみると、今回の一部改定により950~1,049円台の割合が減少し、1,050円以上の求人が増加しています。また、東京都と神奈川県の最低賃金が1,160円台から1,200円台に引き上げられたことにより、全体で見ても1,150~1,199円台の求人が1,200~1,249円台に移行している様子がうかがえました。

都道府県別の動向

ここでは、調査時点で最低賃金の改定を行った自治体において、改定によるアルバイト・パート採用への影響を様々な角度で分析していきます。

まず、2025年10月時点の募集時給が前月比でどのくらい上昇したか分析します。上昇率を都道府県別にランキングで見てみると、調査時点で最大となる73円の引き上げを施行した鳥取県が+3.83%で1位となりました。次いで兵庫県が+3.79%、宮城県が+3.57%と続いています。募集時給の水準がもともと高い東京都などの首都圏は、下位のランクインとなりました。

全国平均は+1.93%の上昇となっており、今回対象となる自治体は全て平均を超える上昇率を記録。最低賃金の引き上げが及ぼす影響の大きさがうかがえます。

続いて、2025年10月時点の募集時給が、最低賃金に対してどのくらい上乗せされているかをランキングで分析します。1位には東京都が差額+138円でランクイン。続いて、千葉県が+127円、兵庫県が+115円となり、首都圏をはじめとする賃金水準の高いエリアが上位となりました。

一方で、募集時給の前月比ランキングでは1位となった鳥取県が、最低賃金との差額においては+82円で最下位となっています。過去最大となる最低賃金の引き上げにより、募集時給を上乗せする余力が首都圏に比べて限られていた可能性があります。

最後に、2025年10月時点の求人数が前月比でどのように変動したかを調査してみます。全国平均では+2.21%増加したのに対し、今回最低賃金の改定を行った自治体では、半数近くで求人数が前月から減少しています。

特に、今回の改定で最低賃金が900円台から1,000円台となった宮城県では、6%以上の減少となりました。一方で、同じく今回1,000円台に突入した鳥取県では-2%程度、新潟県では反対に+8%と増加しています。各企業によって状況も異なりますが、最低賃金の改定により求人の掲載を控える企業も一定あるのではないでしょうか。

まとめ

今回は当社が保有する求人データを活用し、最低賃金の改定が実施された自治体について分析しました。

今回の調査では、最低賃金改定後も各自治体で1~2%程度の求人が新基準を下回っており、特に千葉・神奈川・滋賀といった地域では2%超の求人が追いついていない状況が確認されました。賃上げの波が急速に進む中、求人内容や労働条件の見直しが今後の課題といえます。

募集時給は全国平均で過去最大の伸びを記録し、最低賃金の引き上げが行われた自治体では鳥取県をはじめとして3%を超える上昇率も示しました。一方で、宮城県では求人数が減少するなど、企業側の採用姿勢に影響も出ています。

今後も最低賃金の引き上げは続いていきますが、企業には賃金改定への柔軟な対応に加え、業務効率化や生産性の向上によって賃上げを持続可能にする仕組みづくりが求められます。

求人ビッグデータを活用することで、より詳細に、よりリアルタイムに分析することが可能です。ぜひ今後の営業活動や採用活動にご活用ください。

本件の詳細はこちらのPDFよりご覧ください。
【2025年10月度】都道府県別 最低賃金改定後レポート