2025年4月度 大阪・関西万博×求人市場レポートを発表しました

分析用求人ビッグデータを提供する、株式会社フロッグ(所在地:東京都千代田区、代表取締役:阪野 香子、以下「当社」)は、「2025年4月度 大阪・関西万博×求人市場レポート」を発表しました。
※本調査は「イーアイデム」「バイトル」「マイナビバイト」に掲載されている求人情報を収集・集計しました。
概要
2025年4月13日(日)、大阪・関西万博がついに開幕しました。世界各国から多くの来場者が訪れるこの一大イベントは、観光やインバウンド需要の拡大とともに、会場内の高時給求人が話題となっています。また会場周辺では人手不足への対応が課題となり、求人市場では賃金水準の上昇や採用ニーズの変化が注目されています。
では実際に、万博開催が周辺地域の平均時給や求人数にどのような影響を与えているのでしょうか。今回は当社が収集する求人データをもとに、賃金動向や求人数増減の実態を詳しく分析しました。最新の傾向を把握する参考資料として、ぜひご活用ください!
トピック
■大阪市此花区の平均時給は、万博開催準備が本格化した2025年1月に前年同月比+225円(+18.19%)まで上昇。この伸び率は全国の市区町村で1位となり、2位(+14.51%)や全市区町村平均(+4.82%)を大きく上回る。
■此花区では、2024年11月から2025年2月にかけて「万博」をキーワードに含む求人が大幅に増加。全体の掲載求人数は2024年10月までと比較してピーク時で4.4倍に。
大阪市此花区と全国の平均時給の比較

まずは万博会場が位置する大阪市此花区と、此花区を含む大阪市全体の直近1年間における平均時給推移を見てみます。2024年4月の平均時給は、大阪市此花区で1,229円、大阪市平均で1,219円でした。此花区では2025年1月にかけて平均時給が1,462円(増加額+233円、増加率+18.96%)まで急上昇し、大阪市平均の1,286円(増加額+67円、増加率+5.49%)と比較しても顕著な伸びを記録しました。

さらに、2025年1月のピーク時と前年同月を比較すると、大阪此花区では増加額+225円、増加率+18.19%となりました。この伸び率は全国の市区町村別ランキングで1位であり、2位の鳥取市に3.68ポイント差、全市区町村平均に対しては13.37ポイントと大きな差をつけました(外れ値調整のため、求人数100件以上の市区町村を対象に集計)。

大阪市内の上位5エリアを見ると、此花区を除き平均時給の増加率は5〜7%程度にとどまりました。此花区を含む大阪市全体でも+3.21%と、全国市区町村平均の+4.82%を下回る結果に。時給上昇は、万博会場を抱える此花区に集中的に発生していることが浮き彫りとなりました。

都道府県別で見ると、大阪府の平均時給増加率は+2.94%にとどまり、47都道府県中最下位という結果になりました。大都市圏としてもともと給与水準が高く、伸び率が抑制されやすい傾向はあるものの、大阪府全体では万博開催による目立った影響は見られませんでした。
万博関連求人による求人市場への影響

では、実際に大阪市此花区ではどのような要因で平均時給が大幅に上昇したのでしょうか。
大阪市此花区の求人数を見てみると、2024年12月を境に約4.4倍に急増しています。11月時点で399件だった求人数が12月には1,747件に拡大しており、その大半を占めたのが万博関連求人です。特に、12月初週の万博求人1,455件のうち1,395件が「シンテイ警備株式会社」のイベントスタッフ案件で、日給下限14,500円(時給換算約1,812円)の高単価求人が多数出稿されました。日給制のため時給下限推移には直接反映されませんが、他社からも時給2,000円前後の万博案件が複数出稿され、これらが平均時給を押し上げる要因となっています。
「万博」をキーワードに含む求人数は、2024年12月をピークに減少傾向を示し、直近の2025年4月時点では27件と大幅に縮小しています。これは、万博開幕前の準備期間に必要な人員を確保し終えたことで、募集が一時的にクローズされた結果だと考えられます。
一方、産経新聞「海上の日差しに長蛇の列…大阪万博の新たな課題『春の熱中症』から身を守るポイント」によれば、万博会場は海上に位置した日陰が少ない環境のため、すでに来場者の暑さ対策が課題となっています。今後さらに気温が上昇していくなかでスタッフにも体調不良リスクが生じることが予想され、シフト調整や交代勤務の強化が不可欠となるでしょう。このような状況から、追加採用や交代要員の確保に向けた万博関連求人が再び増加する可能性も考えられます。

最後に、大阪市此花区における万博関連ではない求人の動向も見てみます。特に「飲食/フード」では、「万博」をキーワードに含んでいない求人においても平均時給が上昇していました。2024年4月を100とする指数で直近1年間の推移を見てみると、2024年12月、2025年2月、同年3月には全国平均を2~3ポイント、東京平均を3~4ポイント上回って賃金が増加しています。万博開催に伴う周辺需要の拡大や人手不足が、万博関連求人以外にも波及し、賃金を押し上げたと考えられます。
まとめ
万博開催による賃金や求人の変化は、会場所在地である大阪市此花区で集中的に発生し、大阪市全体では平均時給の大きな増加は見られませんでした。また、大阪府の2024年1月から2025年1月にかけての平均時給増加率は47都道府県中最下位であり、万博開催の目立った影響はありませんでした。
また、此花区における万博関連求人は2024年12月をピークに減少傾向にありますが、熱中症対策のための人手確保や夏休みに伴い、今後再び増加傾向に転じる可能性もあります。万博はまだ開始したばかりのため、今後の求人市場の動向にも注目していく必要があるでしょう。
本件の詳細はこちらのPDFよりご覧ください。
【2025年4月度 大阪・関西万博×求人市場レポート】