2025年9月度 都道府県別 新最低賃金未満の求人割合レポートを発表しました

分析用求人ビッグデータを提供する、株式会社フロッグ(所在地:東京都千代田区、代表取締役:阪野 香子、以下「当社」)は、「2025年9月度 都道府県別 改定後最低賃金未満の求人割合レポート」を発表しました。
概要
厚生労働省が発表した「地域別最低賃金の全国一覧」によると、2025年度の最低賃金引き上げ額の幅は63円~82円となりました。最低賃金の全国加重平均額は1,121円で、2024年度の1,055円から66円増加。過去最大の引き上げが10月以降行われることとなります。
では最低賃金の改定後に、時給の引き上げが必要となる求人はどれだけあるのでしょうか。今回は当社が収集している求人媒体の掲載情報を活用し、最低賃金改定前の求人を対象に、改定後の最低賃金に満たない割合を都道府県別に分析しました。最新の傾向を示す参考資料として、ぜひご活用ください!
トピック
・改定後の最低賃金に満たない求人は全国で46.38%に上り、約2件に1件が時給引き上げを必要としていることが明らかに
・都道府県別では、秋田県(66.27%)、青森県(62.90%)、岩手県(62.39%)が上位を占め、東北地方で特に割合が高い傾向が見られた
・一方、東京都(37.49%)や静岡県(38.54%)では割合が低く、都市部を中心に改定後水準を上回る求人が多い結果となった
・最低賃金の引き上げ率が高い地域ほど改定後の最低賃金未満の求人割合も高く、賃上げへの対応が迫られている
最低賃金の改定状況

まずは最低賃金の全国加重平均額を推移で見てみます。年々引き上げ率は高まっており、2025年度は前年と比較して+6.26%(+66円)の上昇となりました。昨今の物価高などが反映され、賃上げの勢いが強まっている様子がうかがえます。
※最低賃金の改定については厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」を参照

続いて、都道府県別に最低賃金の改定額を見ていきます。引き上げ額の幅は63円~82円で、今回の改定により全ての都道府県で最低賃金が1,000円を上回りました。
東北地方や九州地方を中心に、引き上げの目安額に10円以上上乗せした自治体は11県で、熊本県では全国最大となる82円の引き上げを予定しています。
また、秋田県・福島県・群馬県・徳島県・熊本県・大分県の6県では、最低賃金改定の施行日が2026年以降に設定されています。引き上げ幅の大きい自治体や、前年に大幅改定を行った徳島県では、中小企業などが賃上げに向けた準備期間を確保できるよう、時期の調整を行っている様子がうかがえます。
※最低賃金の改定については厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」を参照
募集時給の動向

アルバイト系求人サイトにおける募集時給の全国平均を推移で見てみると、2022年1月から2025年9月までの約3年半で募集時給は1,149円から1,195円へと+4.00%(46円)上昇しました。
また、2022年度と2023年度については、最低賃金改定が行われた10月にそれぞれ前月から+0.60%程度時給が上昇しています。
一方、2024年度を見てみると、改定前の9月に前月比+0.34%上昇。その後10月には一度平均時給が減少し、11月から再び上昇を始めています。10月は9月と比較して最低賃金水準の求人が多く出稿されたため、平均時給が下がったものと考えられます。
2025年度は、最低賃金の改定額が決まり始めた9月に前月比+0.50%上昇し、現時点で年内最大の上昇率を記録しています。今後の引き上げに伴う動向に注目です。
新最低賃金未満の求人割合
ここでは、2025年9月時点で改定後の最低賃金に満たない求人の割合を都道府県別に調査します。これにより、今後の最低賃金改定で時給を引き上げる必要のある求人がどれだけあるかを分析しました。

都道府県別の割合をランキングで見てみると、80円の引き上げを行う秋田県で改定後の最低賃金1,031円に満たない求人が66.27%となり、全国最大となりました。次いで、76円の引き上げを行う青森県が62.90%、79円の引き上げを行う岩手県が62.39%と並び、上位3位全てが東北地方からのランクインとなっています。
全国的に見ると、50%を超える自治体は19府県あり、全国平均でも46.38%。半数近い求人が、今後時給の引き上げを行う必要があることがわかります。
改定後の最低賃金未満の求人割合が低い地域には、東京都が37.49%で最小、次に静岡県が38.54%、千葉県が39.15%と並びました。一方で、同じ首都圏内でも神奈川県では52.98%と半分を超えています。

続いて、最低賃金の引き上げ率と新最低賃金未満の求人割合における、関連性を分析しました。
2つの値を比較すると、引き上げ率が高い地域ほど、改定後の最低賃金に満たない求人割合が多い傾向が見られました。賃金水準の低い地方や、労働分配率の高い中小企業では、賃上げに向けて価格転嫁などを進めていく必要があるのではないでしょうか。
以降は、新最低賃金未満の求人割合が高かった上位3位のエリアについて、職種別の動向を分析します。
秋田県

まず1位の秋田県で、改定後の最低賃金に満たない求人割合を職種別に見てみます。「販売/接客/サービス」が76.57%で最大となり、次いで「製造/工場/化学/食品」が74.07%、「飲食/フード」が73.91%と続きました。
青森県

次に2位の青森県では、「ファッション/アパレル/インテリア」が82.86%で最大となりました。続いて「製造/工場/化学/食品」が79.17%、「運輸/物流/配送/警備/作業/調査」が77.01%と続いています。
岩手県

最後に3位の岩手県では、「製造/工場/化学/食品」が79.59%で最大となりました。続いて「販売/接客/サービス」が78.78%、「運輸/物流/配送/警備/作業/調査」が69.69%と続いています。
3県でそれぞれ上位3位までにランクインした職種は、「販売/接客/サービス」「製造/工場/化学/食品」「飲食/フード」「ファッション/アパレル/インテリア」「運輸/物流/配送/警備/作業/調査」の5つのみとなりました。特に接客業や物流系、製造系の職種において、時給の引き上げが必要となることがわかります。
まとめ
今回は当社が保有する求人データを活用し、改定後の最低賃金に満たない求人の割合を都道府県別に分析しました。
2025年度は、過去最大となる全国加重平均+66円(+6.26%)の最低賃金引き上げが行われ、すべての都道府県で最低賃金が1,000円を超える水準に達します。物価高や人材確保の難しさを背景に、地域間の賃金格差を是正する動きが進む一方、中小企業を中心に対応負担の増大が懸念されています。
今回の分析によると、全国平均で46.38%の求人が改定後の最低賃金に満たない状況にあり、特に秋田・青森・岩手といった東北地方では6割を超える求人が時給引き上げを必要としています。製造・販売・接客など労働集約型の職種を中心に改定後の最低賃金未満の割合が高く、特定業種の構造的な課題が表面化しているといえます。
一方で、東京都や千葉県など大都市圏では4割を切り、既に高い時給水準が定着していることがうかがえます。最低賃金の引き上げ率の大きい地域ほど時給の引き上げを求められる求人も多い傾向が確認されており、今後は価格転嫁や業務効率化がより一層求められるのではないでしょうか。
求人ビッグデータを活用することで、より詳細に、よりリアルタイムに分析することが可能です。ぜひ今後の営業活動や採用活動にご活用ください。
本件の詳細はこちらのPDFよりご覧ください。
【2025年9月度】都道府県別 新最低賃金未満の求人割合レポート