2026年9月度 最低賃金改定前の状況調査レポートを発表しました

分析用求人ビッグデータを提供する、株式会社フロッグ(所在地:東京都千代田区、代表取締役:阪野 香子、以下「当社」)は、「2026年9月度 最低賃金改定前の状況調査レポート」を発表しました。

概要

2026年9月3日、厚生労働省は2026年度の最低賃金の改定額がすべての都道府県で答申されたことを発表しました。今回の改定により引き上げ幅は54円~65円となり、全国加重平均額は1,177円と、2025年度の1,121円から56円増加。過去2番目の引き上げ額となり、10月以降、都道府県ごとに順次新たな最低賃金が適用されます。

では、最低賃金の改定によって、実際に時給の引き上げが必要となる求人はどれだけあるのでしょうか。今回は当社が収集している求人媒体の掲載情報を活用し、最低賃金改定前の求人を対象に、改定後の最低賃金を下回る求人の割合を都道府県別に分析しました。2026年度の最低賃金改定が求人に与える影響を知るための参考資料として、ぜひご活用ください!

トピック

・2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円となり、全都道府県で54~65円の引き上げとなった
・改定後の最低賃金を下回る求人の割合は全国で44.82%、秋田県では58.76%と2年連続で全国1位となった一方、千葉県は33.72%、東京都は33.98%と首都圏では3割台にとどまった
・秋田県では最低賃金と同額の時給で働く場合、週19時間勤務では年間収入が約13.7万円増加する一方、年収130万円未満で働く場合は月間労働時間が約14.8時間、年収150万円未満では約17.3時間短くなる
・秋田県で改定後の最低賃金を下回る求人の割合は「ファッション/アパレル」が81.43%と職種別で最も高くなった

2026年度の最低賃金改定額は?

2026年度の最低賃金改定では、全国加重平均額が前年度から56円増加し、1,177円となりました。前年度と比較して引き上げ幅はやや低下したものの、過去2番目の高水準となっています。

都道府県別の引き上げ幅は54円~65円となり、目安額に5円以上上乗せした地域は10県にのぼります。佐賀県では目安額に9円上乗せした65円の引き上げで、全国最大の引き上げ幅となりました。

また、今回の改定により最低賃金が1,100円以上の都道府県は8都道府県から29都道府県へと大幅に増加しています。さらに、最高額と最低額の差も2025年度の203円から195円へと縮小し、最低賃金の地域差が改善されていることがわかりました。

一方で、発効予定日については昨年度と異なり大多数の地域で10月中となっています。11月以降に発効する地域は10府県にとどまり、最も遅い沖縄県(12月2日)を含め、すべての都道府県で年内に改定が完了する見通しです。

※厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」を参照
※発効日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性があります

2026年9月時点で改定後の最低賃金を下回る求人はどのくらい?

ここでは、最低賃金改定前のデータ(2026年9月7日時点)を使用し、改定後の最低賃金を下回る求人の動向を分析します。これにより、最低賃金の改定が行われた際に、募集時給を引き上げる必要のある求人がどの程度存在するかがわかります。

都道府県別動向

都道府県別に見ると、新最低賃金未満の求人割合が最も高かったのは秋田県(58.76%)で、2025年度の調査に続いて2年連続の1位となりました。次いで徳島県(58.40%)、青森県(55.37%)と続き、地方部における影響の大きさが際立っています。一方、最も割合が低かったのは千葉県(33.72%)で、東京都(33.98%)、埼玉県(39.13%)とともに首都圏が低い水準に留まりました。

また、2026年7月から2026年9月にかけてどの程度割合が減少したかを見てみると、北海道が-7.46ptと最大の改善を見せました。7pt以上減少した自治体は5道府県となり、改定に向けた企業の時給調整のスピード感には地域ごとにばらつきがうかがえます。

さらに、改定後の最低賃金を下回る求人を対象に、募集時給をいくら引き上げる必要があるかを試算したところ、全国最大となる65円の引き上げを実施する佐賀県が52円で1位、次いで64円引き上げる鹿児島県が51円で2位となりました。

これらの結果から、大幅な最低賃金引き上げが行われる地域ほど、募集時給への直接的な影響や企業のコスト負担が大きくなる傾向が鮮明となっています。

1位となった秋田県への影響は?

秋田県では、前年度の最低賃金の改定が2026年3月31日に行われ、951円から1,031円まで80円引き上げられました。今年度の改定では2026年10月14日に1,090円まで59円の引き上げが実施される予定となり、これにより1年間で139円もの最低賃金の引き上げが行われることとなりました。

最低賃金ベースでアルバイトやパートを採用している企業にとっては、人件費への負担も少なくありません。例えば月100時間働く従業員が50名いた場合、全員の時給を139円引き上げると1ヶ月あたりの人件費は約70万円増加します。さらに社会保険料の負担等も発生するため、特に労働分配率の高い中小企業にとっては、賃上げの原資確保や生産性の向上が課題となるのではないでしょうか。

ここでは、秋田県における最低賃金の改定が募集時給や年収の壁にどのような影響を及ぼすか、さまざまな角度で分析します。

職種別動向

続いて秋田県における新最低賃金未満の求人割合を職種別に分析すると、「ファッション/アパレル」が81.43%と最も高くなり、次いで「製造/工場」が77.05%、「販売/接客」が70.54%と続きました。

これらの上位職種における傾向は全国的な動向とも非常に近く、販売・製造・接客分野を中心に最低賃金改定の影響が大きく表れることがわかります。

年収の壁に対する影響

アルバイト・パートとして最低賃金水準で働く人にとっては、最低賃金の改定によって同じ時間働いても得られる年収が増える一方、社会保険や健康保険の扶養を意識して働く人にとっては、年収の基準に達するまでの労働時間が短くなります。

そこで、秋田県において最低賃金と同額の時給で働く場合を想定し、①週20時間未満で働く場合、②配偶者の扶養内で働く場合、③19~22歳の大学生などが親の扶養内で働く場合の3つについて、最低賃金の引き上げによる変化を試算しました。

ケース試算内容951円の場合1,090円の場合変化
週19時間勤務時の年間収入約94.0万円約107.7万円約13.7万円増
年収130万円未満で働ける月間労働時間約114.1時間約99.3時間約14.8時間減
年収150万円未満で働ける月間労働時間約131.6時間約114.3時間約17.3時間減
※最低賃金と同額の時給で年間52週働いた場合の試算。②③の月間労働時間は、年間の労働時間を12ヶ月で割った月平均。税金・社会保険料等は考慮していません。

①週20時間未満で働く場合、同じ週19時間でも年収は約13.7万円増加

2026年10月から、従業員数51人以上の企業では、週20時間以上働くなどの条件を満たす非学生のパート・アルバイトが社会保険の加入対象となります。これまで「106万円の壁」として意識されてきた月額8.8万円の賃金要件も撤廃される予定です。そこで、社会保険加入を避けるため週20時間未満で働くケースとして、週19時間勤務を想定しました。

最低賃金951円の場合、週19時間働くと年間収入は約94.0万円となります。一方、最低賃金が1,090円になると、年間収入は約107.7万円となり、同じ週19時間の勤務でも約13.7万円増加します。

つまり、最低賃金の引き上げによって、社会保険加入を意識して労働時間を週20時間未満に抑える人にとっては、同じ労働時間でも年間で得られる収入が大きく増えることになります。

②配偶者の扶養内で働く場合、130万円を超えないための労働時間は約14.8時間/月ほど短くなる

次に、従業員数50人以下の企業で働き、配偶者の健康保険の扶養内で働くケースを見てみます。健康保険の扶養については、原則として年間収入130万円未満が一つの基準となるため、130万円の壁を意識した場合の労働時間について考えました。

※企業規模の要件は、厚生年金保険の被保険者数を基準として判定されます。本記事では便宜上「従業員数50人以下」と表記しています。

なお、短時間労働者の社会保険加入における従業員数の要件は今後段階的に撤廃される予定です。要件が撤廃された後は、企業規模や年収にかかわらず、週20時間以上働くことなどが社会保険加入の条件となるため、今回の試算はあくまで現時点の制度を前提としています。

試算の結果、最低賃金951円の場合では年間収入を130万円未満に抑えるために働ける時間は約114.1時間/月となります。一方、最低賃金が1,090円になると約99.3時間/月となり、約14.8時間/月ほど短くなります。

最低賃金が139円引き上げられた際に同じ年収130万円未満という基準を維持する場合、1日5時間のシフトでは月に約3日分、1日8時間のシフトでは月に約2日分の勤務時間を減らす必要があります。

③19~22歳の大学生などが扶養内で働く場合、150万円を超えないための労働時間は約17.3時間/月ほど短くなる

最後に、19~22歳の大学生など、親の健康保険の扶養に入って働くケースを見てみます。19歳以上23歳未満の被扶養者は、2025年10月から健康保険の扶養認定における年間収入の基準が150万円未満に引き上げられていることを踏まえて、試算しました。

なお、一般的な昼間の大学生は、短時間労働者の社会保険適用において原則として対象外となります。週20時間以上働いた場合でも、学生であることを理由に社会保険の加入対象にはならないため、親の健康保険の扶養内で働く大学生にとっては150万円という収入基準が一つの目安となります。

その結果、最低賃金951円の場合では年間収入を150万円未満に抑えるために働ける時間は約131.6時間/月となります。一方、最低賃金が1,090円になると約114.3時間/月となり、約17.3時間/月ほど短くなることがわかりました。

今回の試算から、最低賃金の引き上げによって、年収の基準そのものが変わらなくても、その基準に達するまでに働ける時間が短くなることがわかります。最低賃金の引き上げは、働く人の収入を押し上げる一方で、社会保険や健康保険の扶養を意識して働く人にとっては、これまでと同じ年収水準を維持するために労働時間を調整する必要性を高めることになるでしょう。

※年収の壁については厚生労働省「「年収の壁」への対応」を参照

本件の詳細は下記URLよりご覧ください
https://hrog.net/report/136809/